家を売る女

 

 

『家を売る女』というドラマがスタートいたしました。ご覧になった方も多いかと思いますが、その名の通り不動産会社に勤める主人公が様々な状況で家を売っていくドラマです。同じ業界モノとあって、興味を惹かれて観てみましたが、なかなかどうして、プロの目から見ても面白いドラマです。

 

 主人公は、北川景子演じるとある不動産仲介会社の営業チーフ三軒家万智。「私に売れない家はない」と、家を売り抜群の営業成績を上げています。と言っても、悪しき業者の如く「とにかく売ってしまえば勝ち」とばかりに強引な営業をするのではなく、相手のことをとことん考え、ドンピシャリなセールスを行っていきます。

 

 初回の第1話の相手は、ともに医者であるご夫婦。「病院から近く、予算は1億円の新築、リビングに階段は必須」という条件で家を探しているのですが、同僚の若手は真面目に探して条件に合う家が見つけられずギブアップ。ところが三軒家チーフは、この夫婦と一人息子との関係を懸念し、まったく希望とは異なる5,000万円の1LDKのマンションを提案します。ご夫婦も当初はこの提案に面食らうのですが、よくよく考えればまさに自分たちにはピッタリとこの提案を歓迎します。(しかもこのマンションがなかなか売れなくて困っていたものだったりするので、見事な一石二鳥なのです)

 

 第2話は、引きこもりの中年息子と暮らす老夫婦が相手。5,000万円の家を売って2,500万円くらいの家に買い替えを希望しています。上司からは、「4,000万円の家に買い替え、1,000万円は手元に残すプランで提案しろ」と指示が出ます。そしてその通りに若手が提案しますが、拒否されてしまいます。老夫婦の希望はあくまでも2,500万円の家。その希望を不審に思った三軒家チーフは、引きこもりの息子の存在を探り出します。老夫婦は息子のためにお金を残そうとしていたのです。三軒家チーフは、2,500万円の自宅+1,500万円の投資用マンション購入をセットで提案します。老夫婦亡きあとも、引きこもり息子が生活していけるようにという意図からの提案でした。老夫婦も息子ももちろんこの提案を歓迎、会社も結果的に4,000万円分の不動産が売れてメデタシメデタシでした。

 

 単なるドラマですが、個人的に注目したのはその提案内容です。一般的に「お客様の要望を良く聞いて、それにいかに応えるか」が大事だと思われがちです。しかし、「スティーブ・ジョブズが顧客の要望を聞いていたらiPhoneは生まれなかった」と言われる通り、お客様の言う通りにすることだけが良いわけではありません。時としてお客様自身が気付いていない価値やニーズを見出して提案できるのが、真のプロフェッショナルと言えるでしょう。三軒家チーフは、それを見事に体現していて、見ていてとても勉強になります。

 

 ドラマは、コメディータッチで気楽に見られ、家族は笑いながら見ていましたが、三軒家チーフの見事な提案に、一人違うところで唸りながら見ていました。弊社は、賃貸業を主力としていますので、ドラマのような提案をする機会はほとんどありませんが、単にお客様の要望に応えるだけで終わるのではなく、時として「お客様ご自身も気がついていない価値やニーズに応える提案ができるか」という点に関しては、見習いたいものがあります。ご興味のある方は、ご覧になってみてはいかがでしょうか。

 

不動産業界が休みの水曜日放映というのは、意図的なのかどうなのかわかりませんが、見方によっていろいろと楽しめるドラマだと思います。

 

 

 

(H)