エスクロウサービス(その2)~日本における取引の安全性~

前回はエスクロウ制度を利用した不動産取引の安全性について眺めてみました。それでは、エスクロウ制度がない日本においては安全性が確保されず危険がいっぱいなのでしょうか。いや、そんなことはありません。それに代わって、仲介業者が取引全体の流れを把握して、さらに専門的な知識を持つ司法書士や金融機関と協力しながら安全性に配慮しつつ取引を完了させています。

 

それでは、エスクロウの目的である取引の安全性とは本質的に何を意味しているのでしょうか?それは、「取引の完了のため、障害を事前に取り除くノウハウ」と「それでもやむを得ず中断する場合に関係者への影響を小さくして契約前の状態に戻すノウハウ」ではないかと思います。

 

前者の例を挙げれば、住宅ローンやときに繋ぎローンなどの利用による買主の借り入れをサポートし、売主の担保解除など資金と所有権の移動だけに留まらぬ手続き全体を円滑に行うことであります。司法書士との連携や買主・売主双方の取引銀行との緊密な連絡。当日の取引の段取りを手配し、間違いないように進めます。

 

後者のノウハウについては取引の各段階の時系列的な順序と、それぞれについて可逆性があるかどうかを把握していて、万が一のとき、どこまで後戻りできるかを認識しておくことが大切です。一度支払ってしまった資金を途中で返還してもらうことは困難であると言わざるを得ません。

 

また、一度引き渡した物件を残代金が足りないからといって取り返すことも、やはり不確定な要素を含みます。前回のお話しに戻れば、エスクロウ制度のもとでは取引が完了するまで中立の立場である第三者が、買主から支払われた代金を預かり、不足がないことが確認されてから物件の引渡しが行われ、物件の引渡しが完了したことが確認されてから預かっていた代金が売主の手に渡るので、売主、買主の双方が安心できます。

 

お客様が、ご購入またはご売却を決意される段階から無理なく取引ができるかどうかのアドバイスをし、取引相手を決めるときも、その信頼性について一緒に判断することになります。また、手付金や中間金の額についても不測の事態に備えて、違約金とのバランスを考慮して決めます。そのためにやるべきことは、取引の当事者であるお客様に寄り添い、親密な関係を保つことです。それは引越の準備や借入申込のお手伝いなど多岐に渡ります。

 

こうしたサービス全般が、エスクロウ制度のない日本において、不動産業者が果たす役割であることを強調しておきたいと思います。