マンションの寿命

人間が生活してゆくうえで不可欠な要素として挙げられる「衣食住」の一つである「住まい」は機能の面から見た言葉ですが、これを物理的にその存在を言い表せば「建物」ということになるでしょうか。この世に形ある物として存在する限り、どんなものでも老朽化して永遠に原型を留めていられません。

 

マンションという建物も老朽化して機能が低下し、住まいとして不適格になる日が必ずやってきます。マンション全体の修繕計画やそれにそって徴収される修繕積立金はとても大切ではありますが、来るべき寿命の尽きる日を先延ばしするだけで建替えを余儀なくされるときは必ずやってきます。まるで永遠に生き続ける人などいないように…

 

マンションが建替えられる事例は既にちらほら見受けられます。昭和40年代以前に建てられた物が既に、その時期にきています。マンションの建替えの意思決定は管理組合であり、組合員による議決権の4/5の賛成をもって決定します。区分所有法と管理規約ではそのように決められていますが、所有者の皆さん一人一人の事情が異なる中で建替えがスムーズに進むとは限らないというのが私の予想です。

 

果たして寿命がきたマンションで建替えが進まないままでいるとどうなってしまうのでしょうか?この状態を人体に置き換えるとゾッとしませんか?

 

マンションにも新築からの履歴があり、人の生涯に例えれば、その所有者や居住者に恵まれて幸せな人生を送り、静かにその生涯を閉じた後は不死鳥の如く建替えられることを願っています。そのために弊社がお役に立てることは何でしょう???

 

 具体的にイメージしやすいよう、仮想のストーリーを考えてみます。

1202X年、弊社が所有するマンションの管理組合の総会で建替えの提案が可決されました。これまでの長い交渉を振り返ると感無量です。建物が老朽化して外壁が所々剥がれ落ち、通行人の脇をかすめたこともあり、放置できない状況は誰の目にも明らかなのですが、3✕✕号室を所有するAさんと2✕✕号室を所有するBさんは建替えのための負担金が払えないことを理由に当初は建替えの提案に賛成してくれませんでした。

 

この負担金の額はAさんの場合、ファミリータイプなので1000万円、Bさんの場合は投資用ワンルームマンションで600万円です。マンションの立地は都内の一等地です。適切なプランで建替えた後に手に入る新築の部屋の価値を考えれば負担金以上の価値向上が見込めるはずです。そんな状況で1年経過するうちに、2✕✕号室の賃借人は老朽化した住処に満足できず、快適な部屋へと引越してしまい、2✕✕号室は空室になりました。ご自分で住んでいないBさんはこれを機に他の投資家に売却しました。新しい所有者は建替え後に売却すれば、一時、建替負担金を支払っても利益が得られることを見込んで、建替案に賛成してくれました。

 

問題は3✕✕号室にご自分でお住まいのAさんです。Aさん本人とマンション全体の両方にとって有益な解決方法として弊社が以下のような提案をしました。

  Aさんに弊社所有のマンションに一時引っ越してもらう。

  3✕✕号室を弊社に売却してもらう。

  建替え後、弊社所有の新しい部屋にAさんは賃借人として住んでもらう。

 

以上の取引で発生する費用のうち、弊社からAさんに支払う売買代金を一度に支払わず中立な立場の第三者に預け、Aさんから弊社に支払われるべき賃料(仮住まいも建替え後も)を毎月分割して預けた売買代金から相殺してゆく。

売買代金と賃料の設定に多くの時間を必要としましたが何とか互いに合意することができて、建替え案が可決しました。

 

2203X年、弊社が所有するマンションの管理組合では、ある事件の責任が誰にあるか、で紛糾していました。ある事件とは、マンションが老朽化して外壁が剥がれ落ち、通行人に怪我を負わせてしまったことです。矢面に立たされたのは管理組合の理事長です。しかし、理事長の言い分では、以前から危険を察知して建替えを提案していたにもかかわらず、一部の所有者の反対で実現できず放置せざるをえなかったということでした。管理会社の担当も含め、議論は紛糾するばかりです。

 

 

二つのストーリーはフィクションですが、お読みいただいて感じることがあれば幸いです。