異端児

 私の傍らに一冊の書籍があります。若い頃に購入した本なので、最新の時世を反映するものではありませんが、何気ない話題から記憶がよみがえって、再びページをめくってみたくなりました。その本とは、日本経済新聞社から1994年に出版された「現代経済学の巨人たち」です。執筆者が複数なので日本経済新聞社編とされています。

 

 目次に目を通すと「ケインズ」「シュンペーター」を筆頭に28人の経済学者の名前が並んでいます。その一人一人それぞれについてエピソードを交えながら考え方のメカニズムと実社会における経済制度・政策に及ぼした影響を解説しています。これらの経済学者と呼ばれる人たちは経済学という学問の分野を創り上げてきましたが、彼らの多く、特に早い時期に活躍した人たちにとって、当初は経済学という学問分野は存在せず、別の分野を専攻に選んでいます。そして、そこで身に着けた手法を上手に応用して新たな命題である「社会における人々の経済活動」を解き明かす術としているようです。その術として使われている学問は数学や法学に留まらず、意外にも物理学などの自然科学であったようです。

 

 こうした経緯を考えると、新しい学問を切り開いた先人は、きっと異端児として扱われたのだろうと思ってしまいます。周囲の研究者が皆、自然界の森羅万象を解き明かそうと熱っぽく語っている中、一人で人間臭い営みについて興味を示している変わり者だったのかもしれません。また、新たなフィールドで、その人たちを受け入れる側も数学的処理の訓練が

為されていないがゆえに新しく導入される自然科学の手法に違和感を覚えたのではないかと思います。

 

 

 冒頭に紹介した本は、経済学を築いた巨人の知性と業績を駆け足で盛りだくさんに解説しようというのが主旨だろうと思いますが、私にとって、その理論を理解するには難解すぎたようです。ただ、この本に描かれた人々に限らず、新しいことを手掛けるパイオニアは常に異端児であったのかな、との印象が残る一冊でした。