東京オリンピックと不動産価格

 2013年の秋、オリンピックが東京で開催されることが決まった瞬間、地元の東京に限らず日本中がお祭りムードにつつまれました。各業界がそれぞれの思惑で好景気を期待したでしょう。たとえば、実際に開催される2020年までの7年間、競技場をはじめ、出場選手、関係者や国内外から観戦のために訪れる人々のための宿泊施設の建設などを考えても、日本経済に与える影響は計り知れません。

 

 不動産業界も例外ではなく、前日まで閑散としていたマンションのモデルルームにも見学の予約が殺到したようです。特に、それまでの販売状況を反映させて価格設定した物件は、その後の値上がりを考慮すると、誰の目にも割安に感じられました。その後の4年間、都心部を中心に大方の予想通り不動産価格は上昇を続けて今日に至っています。しかし、前述の例に挙げた建設ラッシュなどは、2020年の開催までの限られた需要でしかなく、それを過ぎれば元の状況に戻るどころか、逆に供給過剰に陥ることも予想できます。そうなると、値上がりを期待して、投機的に取得した不動産は、2020年までのどこかの時点で値崩れを起こすのではないか?そして、その「Xデー」はいつなのか?ということが早い段階から囁かれていました。

 

 私も最近まで、この「値崩れ」にどのように対処するべきか考えを巡らせていました。ところが、ここにきて考えが変化してきて、「東京の優良物件に限って値崩れは起きない」と思うようになりました。その理由は三つあって、これから順番にお話ししてゆきます。

 

 一つ目は収益還元法が一般的になったことです。これは、不動産の価格を査定するときの方法の一つです。その不動産が生み出す収益がどのくらいの利回りかを基に価格を考えます。つまり、条件も収益も異なる近隣の物件が高額で取引されたのをみて、同様に値上がりしたバブル時代とは違って、取得の際に保有している間の収入と支出を見極めることが当たり前になっていることです。二つ目は金融政策において、相変わらず低金利(ゼロまたはマイナス)が続いて、当面は変わらないだろうということです。つまり、不動産以外の投資に比べ、収益還元法によって適切に試算された投資利回りに遜色が見られない限り、急激な価格の変動要因は見当たらないということです。三つ目は東京に限らず日本各地が、海外からの観光客にとって魅力的であることが認知され、年々、日本を訪れる外国人が増加していることです。しかも、国、地方を問わず政策として後押ししており、今後もこの傾向が加速することが予想されています。東京はオリンピックを終えて萎んでしまうのではなく、オリンピックを契機に益々、魅力を増してゆく可能性があるように感じます。

 

 以上の三つが値崩れしない理由です。一方、日本全体の人口動態は残念ながら減少に向かって久しく、なかなか歯止めがかからずにいます。それを考慮に入れると、楽観的な観測だけに終始してはいられません。やはり、東京以外の不動産、また、東京であっても価値を見出せない不動産は苦戦するのではないでしょうか。

 

 

 ここで弊社が所有する不動産を眺めてみると、決して手前味噌ではなく、社名に冠する「バリュアブル」に恥じない選りすぐりの優良物件ばかりです。しかし、「値崩れしない」=「価格の高騰」ではありません。値崩れしないということは様々な局面で心強いことは確かですが、今、保有している物件の売却で大きな利益を出すことはできないし、それを主たる業務にするつもりはありません。今後も不動産の持つ価値を最大限に引き出してゆくことに努めてまいります。