やり残したことが実現する日

 先日、このコーナーに「59歳の秋」という題で還暦を迎える心境を書き連ねましたが、引き続きこのテーマに固執します。60歳になるということは、まだまだ、いろんなことをやり残しているとも言えるし、そのやり残したことをやり遂げる時間があるとも思えます。ただし、人生を陸上のトラック競技に例えれば、すでに1周目を走り終え、その時点でのタイムや消耗の度合いに個人差がでてくる時期です。具体的に言えば、精一杯、己の為すべきことに打ち込んでこられた人もいれば、反対に何を為すべきかさえ見つからないまま後悔ばかりの人もいると思います。また、健康面において誰もが衰えはありますが、皆一様ではなく、その程度にバラツキがでてきます。誰もが2周目を走り始めるにあたり、1周目の影響を避けられません。私の場合は「秋」に例えて語ったとおりです。

 

それゆえ、これまでの人生を振返ってみることも、単なる懐古主義ではなく、その後の生き方に活かす良い機会と捉えたいと思います。振り返るといっても、子供の頃から時系列的に何もかも書き連ねるのでは「私の履歴書」じゃあるまいし、如何なものかという気がします。そこで、「不動産」をキーワードにこれまでの私を眺めてみたいと思います。

 

大学で物理学を専攻した私が、初めて不動産とかかわりを持ったのは「宅地建物取引士」の資格試験でした。このとき、生まれて初めて法律をほんの少しかじってみて、意外にも興味深いものであるという感想を持ちました。法律で定められた文言(条文)を知って理解することは、最初にしなければならないことですが、ただ、それだけでは記憶するという義務感だけに押し潰されてしまったと思います。ところが、具体的な事例を勉強するうちに、いかにも在りそうなストーリーと、何故そのように決められたか、そうでない場合はどのようなトラブルが予想されるかなどに興味が湧いてきました。こうして、法律というものに多少なりとも興味を持ったことは、知らないままで過ごした人生に比べて世間に対する見方が随分と変わり、大いに役立ったと思えます。

 

次に、26歳から30歳までの4年間、不動産仲介業の営業を経験しました。それまでの私は、金銭が絡むことについては、ほとんどすべてがお客の立場でした。つまり、購入するもしないもこちらに決定権がありました。ところが、営業職としてお客様にご購入いただく立場になって、こちらの商品もしくはサービスを選んでいただくことを通して、プロフェッショナルな意識が芽生えました。そんなことは社会人として当然のことですが、私の場合、不動産の営業を経験して身に着けたことであり、その後の人生に大きく役立っていると認識しています。

 

そして、今、弊社はマンションを中心に80室余りの不動産を保有し、賃貸、売却を通して、その価値が最大限に発揮されるよう努めています。その過程において、多くの方に教えを乞い、ご指導賜り、協力いただき、お世話になってきました。また、賃借人、取引先、社員の皆さんのお蔭で保有している部屋の稼働率は限りなく100%に近付いており、その点においては、手掛けた不動産はどれも輝かせることに成功したと自負しております。

 

 さて、これから走る2周目は何を目指していこうか?これまででやり残したことは何か?をよく考えているところです。たとえば、今までやってきたことをそのまま、規模を拡大してゆくのもひとつの走り方だと思います。また、保有物件に賃借人の立場と運営ノウハウを付帯して投資家にお譲りするといったことも考えられます。その場合、単なるオーナーチェンジよりも一歩、深く踏み込んだサービスを想定しています。他にも空室になったタイミングで健康や介護など、今後需要が予想されるテーマに沿った設備を整えた部屋に改装して販売するのも一つの方法でしょう。すぐに実現するのは難しいとしても、遠い将来、こうした様々なノウハウを集大成した新築マンションの開発を目指すことまで夢が広がります。

 

 

 これらのアイディアを活かすには、実現性を冷静に判断する目とともに、長い道のりを継続して走り続けるため、現実の健康状態を直視したペース配分と社内における一致団結した協力体制が不可欠です。この先にこそ、これまでの私の人生でやり残したことが実現する日が来ると信じております。