悪夢から解放される日

今回は恥を忍んで学生時代のことを吐露することから始めましょう。今でも何年かに一度は悪夢として出てきます。そこには、久々に出席した講義の内容がちんぷんかんぷんで途方にくれる自分自身の姿があるのでした。

 

私が後に大学で専攻することになる物理という学問(教科)に初めて出会ったのは高校2年生のときでした。皆さん、ご存知のとおり物理と数学は密接な関係にあります。その関係とはどういうものか?というと、それぞれの立場から、それぞれの表現があろうかと思います。そのうちの一つとして私の意見を述べさせていただきます。「物理とは数学という言語を用いて自然現象を表現すること」。そんなわけで、数学がある程度できないと物理はできません。私は、小学校時代の算数から中学校の数学まで比較的よくできた方だったと思います。高校に入っても身近なところにライバルがたくさん増えて、特別できる方ではなくなりましたが、それでも授業がわからずに困った経験はありませんでした。

 

そして、高校2年で物理の授業(物理の中のひとつである力学)に出会ったとき、そのシンプルな法則によって多くの現象が表現できることに感動を覚えました。その頃の私は歴史、文学、政治など、多様な方面に興味があったのですが、試験の成績はどれもパッとせず、それに比べて物理の点数はほとんど満点かケアレスミスで1問落とす程度でした。また、並行して数学の授業で微分積分を学ぶと、力学がますます面白くなってゆきました。

 

1年浪人して入学した大学で、憧れの学問といえる物理に熱中できるはずだったのに…

楽しい大学生活は、私の心を限りなく開放し、学問以外のことに駆り立てゆくのでありました。教養課程である最初の2年間を終えるとき、さすがに正気を取り戻して何とか付け焼刃で試験をクリアして3年生として専門課程に進みましたが既に手遅れでした。本来やっておかなければならない知的訓練を疎かにしたまま、量子力学や数理物理学といった専門の講義を受けても、全く理解できないまま興味は削がれてゆき、教室に足を向けるのが恐怖に代わってゆくのでした。

 

 

 冒頭で晒した悪夢の要因のひとつとして、40年を経た今でも記憶の片隅に残っている言葉に“シュレディンガー方程式”があります。量子力学における重要な方程式だということ以外は、当時も今も、よく理解できませんが、若かりし頃の情熱を取り戻して何とか凌駕できれば例の悪夢から解放されるかもしれないと密かに目論んでいます。