エントロピー増大の法則

「エントロピー」という言葉を耳にしたことはありますか?これは元々、物理学で使う言葉で、「物質の状態の乱雑さの程度」を数値で表したものです。物理の一分野である熱力学の世界で考案された概念です。最初からご存知の方は別として、初めて耳にする方にとって、このような説明を聞いても理解する人はあまりいらっしゃらないと思います。そこで、身近な例を示しながら「エントロピー」について独り言を語ります。

 

 先程、エントロピーは数値であると言いました。そうであれば当然、その数値を求めるための数式が存在しますが、ここではその数式には触れず、その概念についてお話を進めてまいります。今回の表題を単に「エントロピー」とせずに「増大の法則」を付け加えたのには理由があります。それは、世の中の状態は、放置しておくとエントロピーの値が小さい状態から大きい状態に変化してゆくという性質を明確にしたいからです。まず、エントロピーが大きい状態とはどういうことでしょうか。ここで、具体的な例を挙げてみなしょう。

 

今年は本当に暑い夏でしたが、ここにきて、その暑さも和らいで、これから冬に向けて熱燗が美味しい季節になります。いやいや、いくら寒くても常温でないとお酒の本当の美味しさはわからない、と主張する方も中にはいらっしゃるでしょう。しかし、ここでは、どちらが美味しいかを比べるのではなく、どちらのエントロピーが大きいかを論じています。答えは、常温のほうが熱燗よりエントロピーが大きいのです。熱はエネルギーのひとつの表れです。熱燗が周囲の気温よりも温度が高いのは、そこにエネルギーが集中しているからです。エネルギーが一様に慣らされておらず一か所に集中している状態こそ、エントロピーが小さい状態なのです。そして、放置しておくと熱燗は冷めて常温になります。これこそが、エネルギーが拡散して周囲と一様に慣らされエントロピーが増大したということになります。その結果、常温に冷めたお酒はエントロピーが大きい状態といえます。

 

 

物理学的視点からエネルギーを例に説明しましたが、こういった話は社会の至る所に見られます。例えば、「朱に染まれば赤くなる」という言葉があります。これもエントロピーが増大したと見ることができます。注意してみていると、世の中にはこういったことが多く見つかるのに気が付きます。物理が社会の意外なところで繋がっているというお話でした。