頭の体操

 不動産の価格には実際に取引される価格の他に役所で決めた価格があります。具体的には固定資産税評価額、公示価格、路線価格の三つです。これらは異なる役所の管轄であり、価額も一致しませんが互いを目安として影響し合って価額を決めていると思います。それでは実際に取引される価格はどのようにして決まるのでしょうか。不動産は工業製品と違って一つ一つが異なり、厳密には同じ物件は存在しません。ただし、同じマンションの同じ間取りの部屋など、わずかな条件の違いを除いてほとんど同じであって、その条件の差異を価格の差異に合理的に反映させることで売り手と買い手の双方が納得するという場面はあり得ることです。

 

 ここで大切なのは、「売り手と買い手の双方が納得する」ということであって、それまでの過程において前述の役所の価格が参考に使われることはあっても、それらに制約されるものではありません。むしろ、実際の取引価格の変動を反映して役所の価格が決まるのです。それでは「売り手と買い手の双方が納得する」という状況が成立するための要件について考察してみましょう。

 

 まず、売り手の立場から考えてみると、当該物件を保有しておく必要性が希薄になってきたか、もしくは(かつ)手放すことに経済的合理性を見出したときです。経済的合理性とは、物件を必要としていても他の理由でやむを得ず売却代金を充当せざるを得ない場合もあれば、経済的により有利な資金需要が発生して、そちらに積極的に資金を移動する場合などが想定されます。

 

 次に、買い手の立場を考えると、物件を取得する必要性が高まってくること、かつ取得するためのコスト(売買代金および諸経費)の調達(自己資金、融資)が可能であるといった経済的要件を満たすこと。ここでいう取得する必要性とは、生活スタイルの変化で広い家に買い替える場合もあれば、余剰資金を活用して資産を増やす場合なども想定しています。

 

 

 こうしてみると、売り手も買い手も経済的な要件は個々人の問題ですが、物件の必要性についてはどちらの立場からみても共通な要件です。そう考えると、誰からも必要と感じられる物件ほど取引の成立のための重要な要件であり、価格も上昇するといった当たり前の結論がでてきます。ちょっとした頭の体操でした。